実このお話は、天才コピーライター名言セラピーのひすいこたろうさんが大変気に入ってくれて、「見る見る幸せが見えてくる授業」の中で取りあげてくれたエピソードです。
お子さんの家庭に訪問し、地域の中で子どもの好きなことを思いっきり楽しめるように支援をする会社に勤めていた時の話です。
夏は遠足、冬はスキーなど、長期休暇中にはいろいろなイベントを企画していました。常勤スタッフだけでは手が足りなかったので、ボランティアを集い、学生や教員など様々な立場の人たちに協力してもらっていました。
好きなことやその時にしかできない体験をしながら、のびのびした一日を過ごしてもらいたかったので、個性あふれる子どもたちの行動をできるだけ制限しなくてすむよう、お子さんに一人ひとりにボランティアがついて、活動していました。
ある夏休みの電車内での出来事
ある夏休み、子どもたちと10人と遠足に出かけた時の話です。
常勤スタッフ4名と学生ボランティア7名でのお出かけでした。
その時武智はイベントの責任者として全体を取り仕切る役割でした。
ボランティアスタッフが担当してた小学校2年生の女の子の話です。
お出かけは大好きで遠足を楽しみにしてくれていました。
目的地に向かって電車で移動している間中、その子はずっと大きな声で喋り続けています。担当者が一生懸命おさめようとして声をかけますが、一向におさまる様子が見られず、ますます大きな声でしゃべりはじめます。
その様子をしばらく観察していたのですが、ふと頭に思い浮かんだことがありました。そっと近づいて彼女に語りかけてみたのです。
「 Nちゃん、緊張してるの? 」
すると彼女は「うん」と言ってうなづいてくれたのです。
そこでこう続けました。
「そっか。緊張してるんだね。いつもと全然違うもんね。はじめての遠足だしね。緊張するよね。」
彼女はそれをよく聞いていました。
さらに続けます。
「緊張してるんだね。そっかぁ。大丈夫だよ」
その上で
「じゃぁもう少しだけ小さな声で話そうか^^」
すると彼女は「うん」とうなづいて、途端に静かになったのです。
彼女の中で何が起こったのか
彼女は遠足自体はとっても楽しみだったのだと思います。
しかし一方で、自閉スペクトラム症のある方には、はじめてのこと馴染みのないことなど、見通しのもてないことが苦手という特性があります。
だから彼女も「遠足自体は楽しみ」なんだけれども、同時に「慣れない状況に緊張している」という状態だったのです。
一見するととっても楽しそうにお話ししているので、行動の奥底にある本当の気持ちが見過ごされがちです。
そもそも彼女自身もこの時点では自分が緊張していることがわかってなかったと思います。
「なんかいつもと違うぞ」「なんか落ち着かないぞ」程度のぼんやりした感覚だったのでしょう。
自分でも自覚していなかった自分の本当の気持ちに気づき、人に認めてもらえたからスッと落ち着いたのです。
現在地をはっきりさせること
実際の支援の現場でも、より望ましい行動を子どもたちに身につけてほしいと思ってゴール設定すると思いますが、それだけではうまくいきません。
お子さん自身が「自分の気持ちや状態をはっきりさせること」は、「今、自分が立っている場所(=現在地)」を明確にすることです。
そうすることではじめて、自分自身を調整しようとする気持ちが内側から湧いてくるようになります。
そして、支援する側も、何をどう支援すればいいのかが見えてくるのです。
自分でも気づいていない気持ちや状態。
それを支援する側がよく観察して、わかってあげること。そして伝えてみること。そうすることで、ぼんやりしていた気持ちがはっきりとし、さらにその気持ちを受け止めてもらえることで安心感が芽生え、心身の安定に繋がることがあるかもしれません。
ちょこっとつぶやき
「理解こそ最大の支援!」とは言うけれど…
その理解することが難しいのが「発達障害」と言われている人たち。
だから一人で抱え込まなくていいんだよね。
いろんな人のいろんな目で見て、感じて、考えていけばいいんだ。
間違えてもいい。少しずつ擦り合わせていけばいい。
一回でうまくいかせようとする必要なんてないと思うんだ。
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